DeNA問題に見るウェブコンテンツの難しさ
DeNAが運営するキュレーションメディアで根拠のない医療系記事や、著作権法違反の疑惑がある転載などが問題となり、全10サイトが非公開となり、昨日12月8日、南場会長、守安社長らが記者会見を開き謝罪しました。
前回の記事で言及しましたが、基本的に私はキュレーションメディアの存在事態は非常に有意義だと思っています。
正しく運用され、情報過多のインターネット上で必要な情報を厳選、選別し、発信することは非常に価値があるのです。
キュレーションというはのは、ただのリンク集であってはいけません。
必要な情報を求める人のニーズに沿って、理解を促進するようにとりまとめなければなりません。
しかし、記者会見の中でもありましたように、DeNAがキュレーションメディアを運営する中で最重視していたのは「利益」です。
営利企業ですので、もちろん利益をあげることは大事ですが、
基本的にウェブメディアというのはマネタイズが非常に難しいんです。
時代は紙からデータに移っていますが、拡散力や発信力はインターネットが遥かに優れていますが、やはり影響力の面では紙に軍配があがるような気がします。
まず、ひとつに記者の能力があります。紙媒体は限られたスペースに必要な情報を飽きさせず書き、その内容自体にお金を出してもらう必要があります。
ウェブメディアの場合は、内容そのものより、いかにアクセスを稼ぎ、広告収入に繋げるかという面にあります。読者は多くの場合、記事を無料で読むことができます。もちろん、全てのウェブメディアがそうではありませんし、記者経験のあるウェブライターも多くいますが、少なくともDeNAが運営していたキュレーションメディアは広告収入で成り立っていましたので、いかにアクセスを稼げる記事になるかという面で戦っていました。
ライター育成には非常に時間とコストがかかります。
それも、安定的にアクセスの集まる記事を書き、発信できるライターとなるとそう多くはいませんし、個人的なセンスの部分も大きく、引っ張りだこになります。
実際、大手ニュースサイトも紙媒体を持っているところが多いですし、そちらの購読へ誘導しつつ、同時に広告収入を得ているケースが多いです。
しかし、広告の金額も基本的に紙の方が高いんですよね。
DeNAもかつては自作のコンテンツを配信する質の高い医療メディアを運営していたようですが、利益が上がらず閉鎖したようです。
需要はあるのに、収益化が難しいという歪なウェブメディアの環境下で、短期間で利益をどう出すか考えた時に、今回のDeNAが問題となっている原因があると思います。
読まれるウェブメディアを作るには情報量と、更新頻度が大切ですが、それは多くの記事を書かなければならないということです。
記事を書くためにはしっかりと需要のあるテーマを設定できるような感度と知識が必要です。そして、適切な取材対象を選び、接触していける行動力や人脈、信用。必要な話をしっかり聞き出す取材力。そして面白く、かつ分かりやすく書く文章力。
それらを兼ね備えたライターを量産することはできませんし、少ない人数に大量に書かせることも難しい、プロに外注するのもコスト高。
DeNAのキュレーションは深い知識が無くとも、他者の執筆した記事を引用することで、膨大な記事を量産していました。
結果として、質や信用の低さ、法的な問題が露見して今回の問題が生じたわけです。
キュレーションが情報を収集し、選別し、発信するというのであれば、
そこにはしっかりとしたリテラシーが必要です。
本体、読者が自ら身につけるリテラシーを媒体側が肩代わりする必要があるのです。
もちろん、読者も持つ必要がありますが。
(そういえば最近、あんまりリテラシーって言葉聞かなくなった気がします)
人間って、もっと便利にもっといい物をと求めてしまい、技術者が次々に答えて、もっっと求めてのループになっている気がします。
その先にあるのは誰かが無理して生み出す供給で、低価格であったり、残業であったりするわけです。そこに成長もあるし、矜持も持てる人たちがプロなんでしょうけど。
実際、メディア業界もその流れに飲まれている気がします。
今回のDeNAの記者会見だって、3時間にも及びましたが最初の30分が経ったくらいから、まだ記者会見の途中だというのにニュースとして様々なニュースサイトで小刻みに配信されていました。
記者会見中にわかったことから記事にして配信していくって、それ以上の速報はありません。大手メディアはそこまでして質の高いコンテンツ、求められる情報発信をしているのです。
他者記事引用で利益を得るビジネスモデルのDeNAのキュレーションサイトとは当事者の意識が大きく違うのがわかります。
DeNAの企業体質であるとか、大きな要因はたくさんありますが長くなるのでこの辺で。
もっと面白くて、読み応えのあるウェブメディアが増えたらいいなーというのが私の臨みです。